2014年10月10日
津田
信太郎
住宅都市局長
早良区の宝満神社における保存樹の伐採の件については、以前は15本の保存樹が保存されていたが、平成22年4月に隣接する家屋への被害のおそれがあることや、剪定費用の捻出が困難なことなど、継続的な維持管理が困難なことを理由に、管理者である地域の氏子より13本について指定を解除し伐採したいとの相談を受けた。管理者の相談を受け、職員が現地調査を行い、倒木のおそれがあるものや衰弱したもの、民家に隣接し家屋への被害が想定されるものについては、やむを得ないと判断し、保存樹の指定の解除を行うこととしたが、法律の趣旨からも価値の高い樹木については、できる限り保存するよう要請し再検討を行って、13本のうち2本を選定し保存することに切りかえ、結果として11本を撤去することとなった。
維持管理が困難なことを理由に、結果的に伐採したとのことだが、保存樹制度とはそもそもどのような制度か、内容について尋ねる。
津田
信太郎
住宅都市局長
保存樹制度については、都市の美観風致を維持するための樹木の保存に関する法律に基づき、民有地における樹木のうち幹周りや高さなど一定の基準を満たすものについて、本市が保存樹として指定し、所有者において管理を行い、所有者の管理負担の軽減を図るために、本市が各種支援を行うものである。
保存樹制度とは、都市の美観、風致を維持することが目的であり、立派な保存樹が多ければ多いほど都市の魅力が高まり、本市にとって非常によいことだと考えるが、本市には保存樹はどの程度あるのか。また、所有者の管理負担軽減のために具体的にどのような支援を行っているのか、25年度保存樹事業の決算状況とあわせて尋ねる。
津田
信太郎
住宅都市局長
本市における保存樹の指定本数は、平成26年4月1日現在で1,861本である。支援の内容は、所有者の維持管理の負担軽減を図るため、衰弱樹木の診断、治療費用や剪定費用の助成、第三者への損害賠償のため所有者にかわり市が保険に加入するなどの取り組みを行っている。25年度事業の決算状況は、衰弱樹木等の診断実績が11本で72万1,000円、治療費用の助成実績が5本で114万5000円、剪定費用の助成実績が47本で486万8,000円、損害賠償保険加入額が40万4,000円、そのほか保存樹標識の設置等が176万7,000円で合計890万5,000円である。
樹木の保存のために、総額で約900万円の予算が投じられているが、その取り組みの結果、市の保存樹の状況はどのように推移しているのか。早良区の件では保存樹の指定解除が行われたが、直近の3年間における保存樹の新規指定及び指定解除の状況と増減数について尋ねる。
津田
信太郎
住宅都市局長
直近3年間の保存樹の状況については、新規指定が23年度は23本、24年度は新規指定はなく、25年度は4本である。指定解除は、23年度は36本、24年度は11本、25年度は14本となっており、ここ3年間で34本の減少となっている。
毎年度指定解除される件数の方が新規指定件数を上回っており、その結果本市の保存樹は減少し続けている。風格ある緑豊かな環境共生都市を目指し、各種みどり施策に力を入れている本市において、この保存樹事業は大事な取り組みの一つである。保存樹は、地域にとってかけがえのない大切なものであり、これからも保存樹をふやしていき、守っていかなければならないと考えるが、本市ではどのような場合に保存樹の指定解除を行っているのか。
津田
信太郎
住宅都市局長
保存樹の指定解除については、法第3条第1項に基づき、解除する場合として他の法律により保護されることになったもの、国や地方公共団体の所有または管理になったもの、枯れてしまったり、台風等により倒れたり幹が折れたもの、などがある。また、法第3条第2項において、その他特別な理由である場合の解除が定められており、本市においては倒れるおそれがあるなどの危険性がある場合、家屋の建てかえや擁壁などの改修に支障となった場合、近隣からの苦情などにより所有者が維持管理できなくなった場合、やむなく土地を売却せざるを得なくなった場合、などに指定解除を行っている。
私の地元にも立派な木が生えている少童神社という神社があり、地域住民によって大切に管理されている。一緒に清掃活動を行ったり、維持管理について話を聞いたりすることがあるが、地域からは樹木の管理についてさまざまな意見が出ている。大きな木で大量の落ち葉が発生し、それを掃くだけでも大変な作業であり、それらを集めて処分するにも費用がかかる。管理をしている地域住民は、高齢者も多く、大きな負担になっている状況もある。都市の美観、風致を維持するため樹木を保存する制度があるにもかかわらず、保存樹の数が減少しているのは、地域から聞いた声も含めさまざまな課題が背景にあるのではないか。早良区重留での大量指定解除のような事例などを考えると、このままでは本市や地域にとって大切な資産である保存樹は減少していくばかりではないのか。本市の保存樹の管理における課題は、どのような点にあると認識しているのか。
津田
信太郎
住宅都市局長
保存樹の管理における課題としては、樹木が非常に大きくて古いものが多いことから、所有者にとってはその維持管理に多くの費用がかかることや、近隣住民からの落ち葉や枯れ枝等の苦情対応に苦慮していることなどと認識している。また、21年度及び22年度に保存樹の緊急診断調査を行った結果、治療行為を必要としている保存樹が全体の約半数を超える状況であることも課題の一つであると考えている。
樹木自体の課題として、治療行為を必要とする樹木が多くあるとのことだが、木は生き物であり樹齢が高くなれば衰弱して折れたり倒れたりすることも多くなり、また、松であれば松くい虫による被害などもよく聞く。特に保存樹など大きな樹木になれば、どこかが傷んでいるなどの問題を抱えているのだろうが、個人や地域、氏子などによる管理がほとんどで、負担が大きいのは事実だと思う。治療が必要と判断された保存樹について、市として何らかの対策はとっているのか。
津田
信太郎
住宅都市局長
本市では、緊急診断の結果を所有者に周知し、所有者の希望に応じて樹木医を派遣し、治療方法などについてのアドバイスを行っている。また、24年度から治療や剪定の助成制度を見直し、助成の対象となる要件の緩和や補助上限額の引き上げなどを行い、所有者の負担軽減を図っており、このような対策の結果、近年は市の助成制度の活用が増加している。
市の助成制度などは、ぜひとも積極的に活用し保存樹を守ってほしいと思うが、これまでの答弁を聞くと、地域の緑を守っていく保存樹制度の課題は大きいのではないか。古くから地域の人々が守ってきた鎮守の森と地域の緑がなくなっていくことは、大変に悲しい出来事である。大きな樹木は、地域の人々に安らぎや潤いのある空間を提供するとともに、そこにあるだけで多くの人が集まってくる。長い年月をかけて育った樹木は、その土地がどのような歴史を歩んできたかを我々に伝えてくれる語り部でもあり、本市が力を入れて取り組んでいる教育においては教材ともなり、また、観光集客施策において魅力的な観光スポットにもなり得るなど、多様な施策に対して非常に有効に働く大きな魅力を秘めている。九州では屋久島の縄文杉や蒲生の大楠など非常に有名な大樹があるが、本市にも、南区の桧原桜や博多区櫛田神社の大銀杏など、すばらしい樹木が数多くある。これらの貴重かつ大切な資産を、市民、地域、企業、行政が共有し一緒になって大事にしていかなければならない。早良区重留でのような出来事が起こらないよう、これから本市としてどのような取り組みを行っていくのか、所見を伺う。
津田
信太郎
住宅都市局長
保存樹については、これまで所有者が管理を行い行政が支援するという、両者の関係により維持管理が行われてきたが、保存樹が生み出す美しい景観や安らぎと潤いのある空間は、市民全体がその恩恵を享受しているところであり、鎮守の森を初めとする多くの保存樹は、所有者だけでなく地域の貴重な資産となっている。本市としては、保存樹を初めとする地域の貴重な緑を市民と共働で守っていけるよう、市内の名木や大木を広く知ってもらうためのパンフレット作成などの各種広報を行うとともに、保存樹の所有者からの相談に対し、きめ細やかな対応に努める。
本市は、風格ある緑豊かな環境共生都市を目指して、市民、地域、企業がともに取り組んでいるところであり、今や150万人を超える大都市へと成長したが、都心部から少し離れれば緑あふれる山林、大きく広がる田畑、美しい海や川など豊かな自然が残っている。町なかにおいても人々の憩いの場である大小さまざまな公園や、通りを優しく演出する街路樹、人々の生きる活力源でもある田んぼや畑、市内を南北に流れる河川、四季折々の海産物を育む博多湾など、多くの自然に囲まれて生活をしている。この自然は、小さな子どもからお年寄りまで親しみと安らぎを与えてくれる、欠かすことのできない市民の大切な宝であり貴重な財産でもある。しかし近年では、さまざまな理由により、その大切な資源が減少傾向にあることを危惧している。
残された大切な財産をしっかりと保護し、未来に残していくために、どのような取り組みを行っているのか、また今後の方針等を決算と関連させて質問する。
私にとって特に思い入れの深い緑といえば、神社などにあり、地域の人々から長く親しまれ愛され続けてきた、最も身近な緑の一つである鎮守の森である。幼いころは、この鎮守の森で鬼ごっこをしたり、虫を探して走り回ったり、日が暮れるまで泥んこになってよく遊んだものである。鎮守の森には、大きくて立派な木がたくさんあり、そこには森を守るてんぐがいる、木にいたずらをしたり大切にしなければ、てんぐがやってくると大人から聞かされ、恐ろしいと思いながらも、大きな樹木はとても神聖で大事にしていかなければならないものだと、子どもながらに考えていたのをよく思い出す。このような思い入れ深い鎮守の森であるが、ある保存樹に関して、地域で起こった出来事をきっかけに危機感を抱いている。早良区重留の閑静な住宅街の中にある鎮守の森の一つである宝満神社には、以前は大きくて立派な保存樹が多数あり、神聖で美しい緑が地域を囲み、すばらしい景色が広がっていたが、22年度にこの鎮守の森において本市が保存樹として指定した大木が大量に伐採されるということがあり、新聞等でも報道された。地域に親しまれ、大切にされている鎮守の森だと思っていたが、なぜこのようなことが起こったのか、その内容や経緯について尋ねる。