2019年10月03日
津田
信太郎
環境局長
博多湾の水質については、有機物の量が増大することによる水域の水質汚濁現象の指標となる化学的酸素要求量、いわゆるCODや富栄養化の指標となる全窒素、全リンについて、東部、中部、西部の海域ごとに維持することが望ましい国の環境基準が定められている。CODについては、西部及び東部海域では環境基準を達成する年があるものの、中部海域では未達成の状況が続いているが、平成5年ごろをピークに低減傾向にあり、近年は横ばいで推移している。全窒素については、CODと同様の傾向で推移しており、平成21年度以降、全ての海域で環境基準を達成している。全リンについては、下水の高度処理の導入による効果で低減傾向を示しており、平成10年度以降、全ての海域で環境基準を達成している。
博多湾の環境を保全するため、平成28年9月に博多湾環境保全計画が策定されているが、計画の目指す将来像や取り組みについて尋ねる。
津田
信太郎
環境局長
第2次の博多湾環境保全計画については、水質のみならず、博多湾の持つ豊かな自然環境の保全、再生及び創造を推進することを目的として策定した計画であり、将来像である、生きものが生まれ育つ博多湾の実現に向け、関係局等が一体となって取り組みを進めている。計画に基づき、下水の高度処理の推進や合流式下水道の改善などの発生源負荷対策を初め、海底耕うんや微生物製剤を活用した底質の改善、海底ごみの回収やラブアース・クリーンアップなどの海域及び海岸域の清掃、アマモ場づくりなどの環境保全創造事業の推進などの取り組みを関係局と連携するとともに、多様な主体との共働により推進している。
漁業者にとっては何よりも貴重な海であることから、生きものが生まれ育つという観点は非常に重要である。博多湾の環境保全対策としてのさまざまな施策の一つとして、海域及び海岸域での清掃の取り組みがあり、漂着ごみ、漂流ごみ、海底ごみなどの海洋ごみ問題については、テレビや新聞で連日取り上げられるなど社会的な関心が高まっている。博多湾における漂着、漂流ごみの過去3年間の回収量について尋ねる。
津田
信太郎
環境局長
台風や大雨の状況等により影響を受けるため、回収量だけをもって単純に比較することはできないが、平成28年度が913トン、29年度が581トン、30年度が1,522トンである。なお、平成30年度については、7月豪雨の影響等により回収量が増加したものと考えている。
博多湾は海底ごみ問題という危機に瀕している。海底ごみによる漁場環境の悪化は、博多湾で漁業を営む漁業者にとって死活問題となるため、漁業者は自主的に博多湾の海底清掃を行っていると聞いている。先日の新聞では、底引き網漁業などで回収された海洋プラスチックごみは、陸に持ち帰ると漁業者が処理費用を負担することとなるため、やむなく船上から海に捨てられるケースが多く、プラスチックごみの削減を加速させるため、政府が支援に乗り出すと報じていた。本市において、漁業者が操業中に回収した海底ごみはどのように処理されているのか尋ねる。
津田
信太郎
農林水産局長
本市においては、漁業者と連携しながら海底ごみの回収や処理を進め、漁場環境の改善を図っている。漁業者が操業中に回収した海底ごみは、漁業者みずから漁港や船だまりに持ち帰っている。持ち帰られたごみは、本市の負担により、処理業者と委託契約を締結し、漁港や船だまりへのごみ集積用コンテナの設置及び集積されたごみの運搬処分を行っている。
操業中に回収された海底ごみの処理に係る平成30年度決算額について尋ねる。
津田
信太郎
農林水産局長
218万8,000円である。
漁業者が捨てたごみではないのに、みずから率先して港に持ち帰る行動はとてもすばらしく、漁業者一人一人の意識の高さに感心している。漁業者が操業中に回収した海底ごみの過去3年間の量とその主な種類について尋ねる。
津田
信太郎
農林水産局長
過去3年間の量は、平成28年度が342立方メートル、29年度が372立方メートル、30年度が324立方メートルとなっており、年平均346立方メートルで、6立法メートルコンテナに換算して約58台分である。
環境局長
漁業者により回収された海底ごみの主な種類については、平成30年度から環境局の保健環境研究所において新たに海底ごみの組成調査を開始している。調査結果としては、海外由来と考えられるごみは少なく、国内の陸域由来と考えられるペットボトルやレジ袋などのプラスチックごみが個数比で海底ごみの約7割を占めている。
回収される海底ごみの量は減少しておらず、ごみの多くはペットボトルやレジ袋など私たちの生活に身近なごみである。博多湾は閉鎖性の高い海域であるため、海底ごみの多くは河川などを通じて、陸域の生活ごみが多く流入していると言われており、海に流入する前に陸や川でごみを回収すれば、海底ごみの量を減らすことができる。今回の組成調査のように、どのようなごみがどこから来ているのか調査を行い、明らかにすることは、今後の対策を考えていく上で非常に重要な情報になるので、ぜひ河川ごみについても調査されたい。本市ではさまざまな人が地域の河川を守るための清掃活動に参加している。このような地道な活動が博多湾を守り、本市の魅力を支えている。一人でも多くの人に河川清掃へ参加してもらうため、また、現在活動している人が高いモチベーションを持って活動を継続するため、活動の意義を市民に広く発信し、地域の河川清掃活動の活性化に取り組まれたい。プラスチックごみの中にはレジ袋などの小さい破片が多い。これら小さくなったプラスチックはとても拾いにくく、特に回収するのが難しいごみの一つではないかと考える。近年、マイクロプラスチックが国際的に大きな問題になっているが、マイクロプラスチックの定義と生き物へどのような影響を及ぼすのか尋ねる。
津田
信太郎
環境局長
マイクロプラスチックとは、5ミリ以下の微細なプラスチックごみのことであり、洗顔料や歯磨き粉のスクラブ剤等に利用されているマイクロビーズ等の一次的マイクロプラスチックや、紫外線や熱による劣化等により自然環境中で破砕、細分化された二次的マイクロプラスチックがある。マイクロプラスチックが生き物に及ぼす影響については、現在、大学等で調査、研究が行われているが、魚類等による誤飲やマイクロプラスチックが含有、吸着する化学物質が食物連鎖に取り込まれ、生態系に及ぼす影響などが懸念されている。
一次的マイクロプラスチックは業界団体での使用自粛の取り組みが重要な対策になると思うが、二次的マイクロプラスチックは私たちの生活から発生したプラスチックが原因であるため、プラスチックごみへの対策がそのままマイクロプラスチックの対策にもつながるものだと考える。海洋プラスチックごみに対して、国ではどのような対策が行われているのか尋ねる。
津田
信太郎
環境局長
3Rとリニューアブル、いわゆる再生可能資源への代替を基本原則とするプラスチック資源循環戦略を令和元年5月に策定するとともに、プラスチックごみによる新たな環境汚染を生み出さないための行動計画として、環境省ほか関係省庁が行う具体的な取り組みが、海洋プラスチックごみ対策アクションプランとしてまとめられている。また、6月に開催されたG20大阪サミットにおいて、2050年までに追加的な海洋プラスチックごみ汚染をゼロにすることを目指す大阪ブルー・オーシャン・ビジョンが合意された。国の戦略ではプラスチックごみの流出による海洋汚染が生じないこと、すなわち海洋プラスチックゼロエミッションを目指して、ポイ捨て、不法投棄の撲滅や清掃活動を含む廃棄物の適正処理、海洋ごみの回収処理及び実態把握などに取り組むことが示されている。
G20大阪サミットで大きな注目を集めた海洋プラスチックごみ問題は、新興国を含めた世界全体での取り組みが必要であり、この問題に対する世界全体での取り組みを大きく進めるべく、プラスチックごみの海洋流出の阻止やイノベーションの促進などについても議論が進められたと聞いており、本市でもぜひゼロエミッションを達成されたい。国の活動がある中で、従来からラブアース・クリーンアップなど地域海岸清掃に取り組んでいるが、具体的な活動について尋ねる。
津田
信太郎
環境局長
地域環境美化活動にはさまざまな取り組みがあるが、ことしで28回目となるラブアース・クリーンアップについては、プラスチックとの賢いつき合い方を全国に推進し、取り組みを国内外に発信していく国のプラスチック・スマートキャンペーンの一環として、市内382会場で実施し、565団体、4万3,809人が参加している。具体的には、プラスチックごみ専用袋を使用して、プラスチックごみに注目した清掃活動を行うとともに、使い捨てのプラスチック製品はできるだけ使わないなど、市民一人一人がプラスチックの使用そのものを減らしたライフスタイルへ変革することを意識づける、私のプラスチックごみ削減宣言や啓発パネル展示などを実施している。また、回収したごみは組成調査を行い、結果をホームページや広報紙、出前講座等により広く周知を図っている。
本市でも海洋プラスチックごみ汚染防止に向けた取り組みが始められており、非常にうれしく思う。これらの取り組みが広がっていくことを期待する。一方、これらのプラスチックごみはもともと私たちの生活から発生したものであることを考えると、プラスチックごみの削減には市民一人一人の意識向上が必要であり、そのためには環境教育、啓発の取り組みが非常に重要となる。環境局ではどのような環境教育、啓発に取り組んでいるのか尋ねる。
津田
信太郎
環境局長
福岡市環境教育・学習計画に基づき、環境保全に向けた人づくり・地域づくりの視点に立ち、市民、市民団体、学校、事業者が主体的に環境保全活動を実践してもらえるよう、環境教育、学習の支援に取り組んでいる。プラスチックごみに関しては、市民向けの事業として、保健環境研究所のまもるーむ福岡において各種講座を実施するとともに、海洋ごみをテーマとした出前講座等を実施している。学校向けの事業としては、副読本を配付して環境学習を支援するとともに、ごみの分別やリサイクルについて学習する事業を行っている。そのほか3Rステーションが発行する情報誌において、海洋プラスチックごみに関する特集記事を連載するなど、広報誌やホームページを活用し、広く啓発を行っている。
引き続きしっかり環境教育、啓発に取り組まれたい。本市の水産振興を図る上で重要な漁場であり、海のゆりかごと言われる博多湾の海底ごみ問題について、農林水産局の所見を尋ねる。
津田
信太郎
農林水産局長
博多湾の海底ごみは、漁場環境保全の観点から大変重要な問題であると認識している。漁業者との連携による海底ごみの回収や処理を継続して実施するとともに、平成30年度から取り組んでいる海底ごみから博多湾を守る市民啓発事業であるFUKUOKAおさかなレンジャーとの相乗効果により、博多湾の海底ごみ削減を推進し、漁場環境の改善に努めていきたい。
FUKUOKAおさかなレンジャーの取り組みの概要について尋ねる。
津田
信太郎
農林水産局長
博多湾の海底ごみやごみそのものを減らすリデュースについて市民意識を高めることで陸域から博多湾に流入するごみを減らし、豊かな博多湾を守っていくこととしており、取り組みとしては、海底ごみを調査、撮影して啓発素材を制作する、海底ごみの見える化、及び環境団体が実施する清掃活動等に参加して啓発を行う、他団体との連携の2つを事業の柱としている。平成30年度は啓発素材として動画、ポスター、リーフレットを制作するとともに、地域の住民や環境団体等が実施する清掃活動等に参加し、啓発を行っている。
FUKUOKAおさかなレンジャーの啓発動画は、ふだんの生活では目にすることのない海底ごみの状況や影響などを知ることができる動画だと思うので、積極的に活用されたい。この動画の中に、漁師は海底ごみを回収しているが限界があり、市民の心がけ一つで大きく変わるというような漁業者のコメントがあった。一人一人が博多湾の海底ごみ問題を自分のこととして捉え、みずからが行動することが博多湾の海底ごみの削減につながると考える。さらに、博多湾では、海底ごみ以外にもさまざまな要因により漁場環境が悪化し、漁業に支障を来しているため、漁業環境の改善に向けたさまざまな施策と連携を図りながら、次の世代に豊かな博多湾を引き継いでいく必要がある。一方、博多湾には人とものを動かす港としての大きな役割があり、港湾空港局に博多湾の環境に関するセクションがあることは非常に有意義である。港湾空港局の博多湾の環境に関する取り組みについて尋ねる。
津田
信太郎
港湾空港局長
人と環境の共生を目指し、アイランドシティ周辺のエコパークゾーンを中心に、生き物を育むアマモ場づくりや水底質改善などの海域環境の質の向上に取り組んできた。平成30年5月には、市民、市民団体、漁業関係者、企業など23団体及び個人会員6人で構成する博多湾NEXT会議を設立し、その活動を通じて豊かな博多湾の環境を次世代に引き継いでいくことを目指している。
博多湾NEXT会議の平成30年度の決算額、取り組みについて尋ねる。
津田
信太郎
港湾空港局長
決算額は704万5,000円である。取り組みについては、アマモ場づくりに加え、豊かな博多湾の環境を市民の皆さんに知ってもらうため、市民シンポジウムやイベントを開催するとともに、海の生き物などを撮影した動画を作成し、博多湾の魅力の一つとしてホームページなどで発信している。博多湾NEXT会議については、会員数が設立後1年半で約2倍の40団体、個人会員19人へとふえるなど、ネットワークが広がるとともに、会員団体においてアマモの生息場所を把握するソフトウェアの作成が進められるなど、新たな取り組みも始まっている。
ことし2月に博多湾NEXT会議が開催した市民シンポジウムに参加し、市民団体や漁業者など多様な主体が活動する事例を知り、特に高校生が地域住民と一体となって保全活動に取り組んでいることに感心した。また、生き物豊かな博多湾の海中動画に感銘を受け、改めて豊かな博多湾を次世代に残すべきだと考えた。市民と企業、行政などさまざまな人々が連携すれば発信力は大きくなり、次の展開につながっていくと考える。この博多湾NEXT会議の活動は非常に有意義であり、今後もしっかり取り組まれたい。博多湾の環境保全について今後どのように取り組んでいくのか、各局の所見を尋ねる。
津田
信太郎
農林水産局長
農林水産局では、平成29年3月に、豊かな海の再生と持続可能な水産業の創生を目標とする第10次福岡市水産業総合計画を策定している。本計画の重点施策の一つとして、豊かな里海づくりを掲げ、漁場環境の改善に向けて環境局や港湾空港局などの関係局や福岡市漁業協同組合等と連携して、海底耕うんや微生物を利用した博多湾内の底質の改善、魚介類の産卵、生育の場となる藻場の造成などに取り組んでいる。引き続き、関係部局や民間団体等と連携を図りながら、漁場環境保全の観点から博多湾の環境保全を推進し、市民の皆様への新鮮な魚介類の安定供給に努める。
港湾空港局長
港湾空港局では、平成28年3月に改訂した港湾計画において、物流、人流、環境の3つの視点で方針を定め、港づくりを進めている。今後も博多湾における港湾活動と環境の共生を目指し、市民との共働による環境の保全と創造の取り組みを推進し、水底質の改善や自然と触れ合える場の形成など、環境を守り、育てる港づくりを進めていく。
環境局長
環境局では、博多湾環境保全計画に基づき、将来像である、生き物が生まれ育つ博多湾の実現に向け、海洋ごみを削減する視点に立って、特に陸域での廃棄物の適正処理や回収等の取り組みを強化するなど、各局が連携したさまざまな施策を実施するとともに、市民、NPO、民間事業者など多様な主体との連携、共働による取り組みを推進していく。また、環境に関する課題の多くは、市民の日常生活に起因していることから、次の時代を担う子どもたちに対する環境教育のより一層の充実を図るとともに、持続可能な社会の実現に向け、市民一人一人の意識を3Rプラスリフューズ、つまりレジ袋など不要なものはもらわないことに変えていくことでライフスタイルの変革を促す啓発にも積極的に取り組んでいく。
博多湾は市民にとって身近な自然であり、豊富な魚介類の宝庫である。本市の魅力と言えば都市と自然の調和であり、その魅力を支える自然の代表が博多湾である。博多湾は多くの生き物が生まれ、育つ場であり、本市における生物多様性の恵みの代表が新鮮な魚介類である。本市は魚がおいしいまちとして知られているが、これは豊かな博多湾のおかげである。博多湾は生き物が生まれ育つ海のゆりかごと言われ、福岡市漁業協同組合所属の漁業者により、小型底引き網や刺し網などの沿岸漁業を初め、ノリ、ワカメ、カキなどの養殖が行われており、市民に豊かな海の恵みが届けられているとともに、海外などにおいても高い評価を受けていると聞いている。博多湾の水質は、現在どのような状況にあるのか、長期的な傾向を尋ねる。