2022年12月15日
津田
信太郎
環境局長
地球温暖化対策につきましては、温室効果ガス排出量の削減に向け、国際協調による取組が広がっているところであり、2015年12月にフランスで開催されたCOP21では、新興国を含む全ての国が参加する初の国際的な枠組みであるパリ協定が採択され、産業革命前からの地球の平均気温の上昇を2度Cよりも十分に下方に保持し、1.5度Cに抑える努力を追求していくことが目標とされました。本年11月にエジプトで開催されたCOP27においても、パリ協定の重要性が改めて確認されたところでございます。パリ協定採択を契機に、世界各国が温室効果ガスの削減目標を掲げており、国内においても地球温暖化対策の推進に関する法律において2050年までの脱炭素社会の実現が明記されるとともに、昨年10月に改定された国の地球温暖化対策計画では、2030年度温室効果ガス削減目標を2013年度比で46%削減することが目標とされ、各自治体においても削減目標の設定や目標達成に向けた取組が加速しております。
それでは、脱炭素社会の実現に向けて、福岡市はどのように取り組むのか、温室効果ガス排出量の現状値や目標値を含め、お答えください。
津田
信太郎
環境局長
福岡市では、本年8月に改定した福岡市地球温暖化対策実行計画において、2040年度温室効果ガス排出量実質ゼロをチャレンジ目標として掲げ、2030年度における市域の温室効果ガス排出削減目標を2013年度比で国の46%を上回る50%削減という高い目標を掲げております。直近の2020年度における市域の温室効果ガス排出量は684万トンと、基準年度である2013年度比で25%の削減となっており、2030年度の目標達成に向けては、さらに233万トンの削減を目指してまいります。
福岡市は2030年度における温室効果ガス排出削減目標を国の46%を上回る50%という高い目標を掲げているわけでありますので、その目標達成に向けては、本市の都市としての特性を踏まえた取組の選択と集中が必要であると考えます。
そこで、福岡市はどのような分野、部門で脱炭素の取組を重点的に進めていくのか、お答えください。
津田
信太郎
環境局長
福岡市には製造業が少なく、サービス業などの第3次産業が9割を占めるという産業構造の特性があることから、全国では34%と最も高い産業部門からの二酸化炭素排出割合が8%と低くなっております。その一方で、業務部門が31%と最も多く、次いで家庭部門が28%、自動車部門が26%と、これらの部門からの二酸化炭素排出量で全体の85%を占めており、これら3部門に廃棄物部門を加えた4つの部門を重点的に取り組む部門としております。2030年度における温室効果ガス排出量50%削減の目標達成に必要な233万トンの削減に向けましては、化石燃料による発電から再生可能エネルギーによる発電へと移行が進む電源構成の変化による削減分115万トンに加え、脱炭素型ライフスタイル、ビジネススタイルへの行動変容や省エネによるエネルギーの効率化、再生可能エネルギーの使用によるエネルギーの脱炭素化といった国と連動した施策や本市独自の取組を推進することにより、118万トンの削減を目指してまいります。
排出量の多い業務部門、家庭部門、自動車部門の削減に取り組んでいくということで、ターゲットは明確であります。その中でも、特にCO2排出量が最も多い業務部門においては、福岡市の元気を示す形で、天神ビッグバンや博多コネクティッドなど、都心部におけるオフィスビルの更新が今まさに進んでいるわけであります。
最近、省エネ性能の高い建築物として、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル、いわゆるZEBと言われる建築物のことを耳にする機会が増えてまいりました。このZEBとはどのようなビルなのでしょうか、お答えください。
津田
信太郎
環境局長
ネット・ゼロ・エネルギー・ビル、ZEBにつきましては、断熱性能の高い外壁の使用や自然採光の活用、高効率な空調設備の導入等により、大幅な省エネルギー化を実現した上で、太陽光発電などで電気をつくり、年間のエネルギー消費量との収支をゼロとすることを目指した建築物のことでございます。また、ゼロエネルギーの達成状況に応じて4段階の名称があり、まず、省エネと再生可能エネルギーの導入による創エネの取組で、従来の建築物と比較し、年間の1次エネルギー消費量を100%以上削減している建築物をZEB、省エネと創エネで75%以上のエネルギー削減を実現している建築物をNearly ZEB、省エネの取組で50%以上のエネルギー削減を実現している建築物をZEB Ready、延べ床面積1万平方メートル以上の建築物のうち、省エネ等の取組により、事務所などの場合で40%以上またはホテルなどの場合で30%以上のエネルギー削減を実現している建物をZEB Orientedと定義されております。
更新される建築物は、一度建築してしまえば50年、60年あるいはそれ以上利用されるものですから、建て替えのタイミングを捉えて、より省エネ性能の高い建築物に誘導していくことが非常に重要であると考えます。
そこで、ZEBへの誘導や建築物の省エネ化を推進するためにどのような制度、施策があるのか、国や本市の取組をお尋ねいたします。
津田
信太郎
環境局長
建築物のZEB化や省エネ化の推進につきましては、国のエネルギー基本計画において、新築される建築物の省エネルギー基準を遅くとも2030年度までにZEB基準の水準へ引き上げる方針が示されております。また、ZEB化に関する国の施策としては、環境省と経済産業省において補助制度が設けられており、その補助内容としましては、施設の種類や、ZEB ReadyやZEB Orientedなどの区分によっても異なりますが、補助上限を対象経費の3分の2、上限額を10億円としているものもございます。福岡市におきましては、福岡市地球温暖化対策実行計画において建築物の省エネルギー化に取り組むこととしており、ZEBなど省エネ性能の高い建築物の二酸化炭素排出量の削減効果や国による各種支援制度などに関する情報発信を実施しているところでございます。
国においては、ZEB化に対する補助を実施しているということであります。ZEB化に当たっては、通常の建築より当然コストがかかるわけですから、ZEB化を促すためにはこうした補助による支援は効果的だと思います。ぜひ本市においてもZEB化に対する何らかの支援策を検討していただければと思います。
ZEB化や建築物の省エネ化の民間の動きを加速していくためには、まず市役所自らが率先して取り組むことが何より重要であります。そうした市の率先した取組、実践があってからこそ、市全体に波及していくことだと思います。
そこで、過去、我が会派の議員が質問したところでもありますが、確認の意味を踏まえ、お尋ねをいたします。市役所における地球温暖化対策はどのように取り組むのでしょうか、お示しください。
津田
信太郎
環境局長
福岡市役所の業務に関する温暖化対策の取組につきましては、令和4年3月に福岡市役所地球温暖化対策率先実行計画を策定し、2030年度にエネルギー起源の二酸化炭素排出量を2013年度と比較して70%削減することを目標としております。目標達成に向けては、市有施設の省エネ対策、再生可能エネルギーの利用推進、庁用車の脱ガソリン車への切替えなどを掲げ、取り組んでいくこととしております。
市有施設において省エネ対策を進めるとのことでありますが、ZEB化に関する具体的な取組をお尋ねいたします。
津田
信太郎
環境局長
市有施設におけるZEB化につきましては、これまでに竣工した施設では、博多区新庁舎がZEB Readyの認証を取得しております。市有施設のZEB化に関する方針といたしまして、令和4年度以降に基本設計を行う新築建築物については、原則ZEB Oriented相当以上の性能とし、学校や庁舎等については、より省エネ性能が高いZEB Readyを目指すこととしており、また、基本設計を行う大規模改修についても、最大限ZEB化を図ることとしております。
先ほどの答弁にもありましたが、国は今後建築される建物の省エネ性能を引き上げようとしています。福岡市は国よりも高いCO2排出削減目標値を掲げているわけですから、建築物のZEB化への誘導は、その目標達成に向けて、都心部を中心として建築物の更新が進んでいる今だからこそ取り組むべき施策だと思います。まずは市役所が模範を示すことで積極的にPRを行い、民間事業者への誘導を行っていく。その点においては、市民の利用が多い博多区新庁舎がZEB Readyを取得し、高い耐震性能と環境性能を併せ持つ庁舎に生まれ変わったことは大変意義のある取組だと思います。それに続くように、ZEB化された市有施設が次々完成していくことが理想ではありますが、市有施設のZEB化の方針の対象は令和4年度以降に基本設計を行う建築物ということでありますので、その後の実施設計や建築工事に要する期間を考えますと、当面はZEB化された市の施設は出てこず、民間事業者への波及効果が薄まることが懸念されます。令和4年度以前に基本設計され、現在、建築工事が進む市有施設の全てを今からZEB化することは難しいとは思いますが、例えば、国内外の利用者が多く、福岡市を象徴するようなほかにないシンボリックな施設については、世界から選ばれる都市となるためにも、環境性能を高めていくことが不可欠であると私は思います。
私が所属する経済振興委員会が所管する施設として拠点文化施設があります。緑あふれる文化芸術空間を創出し、市民はもとより、国内外から多くの人が集う施設として、そして本市を代表する施設として整備されることとなっています。事業の提案を受けた令和元年度と比べますと、求められる環境対策のレベルも大きく変わっておりますし、脱炭素社会の実現に向けた市の姿勢を示すPR効果も高く、併せて環境性能という高い付加価値を備えた施設になると思いますので、対応が可能であれば、拠点文化施設についてはZEB化していただきたいと、そう要望しておきます。
最後に、脱炭素社会実現に向けた市有施設をはじめとする建築物のZEB化の推進について、市の意気込みをお尋ねいたしまして、この質問を終わります。
津田
信太郎
環境局長
福岡市地球温暖化対策実行計画に基づく施策の推進に当たっては、建築物は使用期間が長く、その性能、特性が長期にわたり固定されることから、建築物の脱炭素化は、今後、取組の充実強化が必要な分野であります。津田議員御指摘のとおり、特に福岡市を代表するような象徴的な施設での環境に配慮した取組は、福岡市が掲げる目標達成に向けた姿勢を示すものにもなります。関係局で連携しながら市役所が率先して取組を進めるとともに、幅広いPR、情報発信により、市民、事業者の皆様に共感を広げ、実践につなげてまいります。引き続き、人と環境と都市活力が調和した都市を目指し、市民、事業者の皆様と一体となって脱炭素社会の実現に取り組んでまいります。
私は平成29年6月議会の一般質問の中で、地球温暖化対策の取組として、再生可能エネルギー由来の電力利用や市役所における率先した取組の推進について質問をいたしました。それから5年が経過し、その間、カーボンニュートラルや脱炭素といった言葉を新聞記事等で見ない日はないというほど、地球温暖化対策は日本、そして世界全体で取り組むべき重要な課題となっております。福岡市においても、市域における温暖化対策の新たな指針となる福岡市地球温暖化対策実行計画が8月に改定されたところであり、まずはこの計画の概要についてお尋ねをするとともに、市役所における率先した取組について質問をしてまいります。
まずは、地球温暖化対策に関する世界や日本の動向、その取組についてお尋ねをいたします。