2013年10月09日
津田
信太郎
農林水産局長
本市の沿岸漁業就業者の最近5年間の推移は、平成20年778人、平成21年740人、平成22年706人、平成23年676人、平成24年632人である。また、新規漁業就業者は、平成20年12人、平成21年7人、平成22年10人、平成23年6人、平成24年4人で、いずれも年々減少傾向にある。
次に、最近5年間の本市沿岸漁業の漁業生産量の推移について尋ねる。
津田
信太郎
農林水産局長
本市の沿岸漁業の生産量の最近5年間の推移は、平成20年5,393トン、平成21年5,765トン、平成22年5,361トン、平成23年5,545トン、平成24年4,805トンである。
魚をとる人が年々減ってきている状況の中で、漁業生産量の低迷にはさまざまな要因があると思われるが、まずは、生産量を確保するために漁業の担い手を確保することが非常に大切だと考える。後継者対策として、市が取り組んでいることは何か。
津田
信太郎
農林水産局長
漁業後継者対策として、本市沿岸漁業の中心的な存在である青壮年漁業者や、漁協女性部による自主的な魚価向上や、博多湾の環境対策などの研究活動を支援している。また、福岡市漁協が行う新規就業予定者を対象とした研修及び体験漁業等の取り組みを支援するとともに、国が実施する漁業就業者支援フェアを活用し、新規漁業就業者の募集に取り組んでいる。さらに、後継者が漁業を始めるに当たっては、漁船、漁具など大きな資金を要することから、それらの購入に必要な資金の低利融資を行っている。
次に、漁業生産量が減少傾向にあるのは、博多湾などの漁場環境の低下もその一因ではないかと考える。特に博多湾では、河川からの流入によるごみの堆積や、ヒトデやグミ等の有害生物の発生などにより漁場環境の悪化が見られる。市としては漁場環境の改善にどのように取り組んでいるのか。
津田
信太郎
農林水産局長
博多湾の漁場環境の改善については、海底耕うん、覆砂などによる底質改善や、漁業者みずからが取り組む漁場クリーンアップ事業での清掃活動、日々の操業活動による漁場から持ち帰ったごみの回収や処分の支援を行っている。また、漁業生産活動に悪影響を及ぼすナマコの一種であるグミなどの有害生物の大量発生に当たっては、福岡県と協議会を設け、漁業者の活動組織を支援し、有害生物の除去などを行っている。さらに、川の上流の豊かな森から供給されるミネラル等の栄養塩が豊かな漁場を育むことから、漁業者、市民、行政が協働して植林活動を実施している。
また、博多湾は筑前海域における稚魚を育む場として水産生物の産卵や育成の場となっているが、近年は藻場や干潟の減少などから、水産資源の回復力が非常に低下しているのではないかと思われる。水産資源の維持、回復のために、どのように取り組んでいるのか。
津田
信太郎
農林水産局長
水産資源の維持、回復については、アサリ、アワビ、ウニなどの種苗放流や、クルマエビ、ガザミなどを中間育成して放流する栽培漁業と、海域、魚介類の特性に合った漁礁を設置する漁場造成が一体となった、つくり育てる漁業を継続的に推進している。また、藻の種を巻きつけたブロックの投入による藻場の造成を初め、新たな手法による藻場の再生に取り組んでいる。さらに、博多湾の浅い海域において、稚魚の成育環境の整備及び新たな養殖等の可能性について、福岡県水産海洋技術センターの協力のもと調査研究を進めている。
あわせて、ことしは厳しい暑さが続き、漁業操業も大変だったろうと想像するが、博多湾等の海水温も上昇し、魚介類が死滅するなどの影響が出たのではないかと心配している。沿岸漁業への影響は、どうか。
津田
信太郎
農林水産局長
漁場の海水温については、福岡県水産海洋技術センターの調査によると、7月上旬は沿岸、沖合とも平年並み、8月上旬は、沿岸は平年より2ないし3度の著しく高目、沖合はやや高目、9月上旬は、沿岸、沖合とも平年並みかやや高目と聞いている。沿岸漁業への影響については、福岡市漁協への聞き取りによれば、博多湾内の一部漁場において、アワビやサザエのへい死が見られ、高水温や赤潮の要因が考えられるとのことである。また、1そうごち網漁業や、イカ釣り漁業、定置網漁業で不漁となっているようだが、打撃的な被害には至っていないと聞いている。
また、為替相場の円安傾向や、中東情勢の影響等による原油価格の上昇を受け、漁業用の燃油が高騰し、漁業経営は大変厳しい状況ではないかと危惧しているが、何か対応策を講じているのか。
津田
信太郎
農林水産局長
国において、国と漁業者が1対1の負担割合で資金を積み立て、燃油価格が一定の基準を超えて上昇した場合に積立金から漁業者に補填金を交付する漁業経営セーフティーネット構築事業を実施している。さらに、ことしの7月からは、1リットル当たり95円を超える分は国と漁業者の負担割合を3対1にする漁業用燃油緊急特別対策が追加実施された。福岡市としては、漁業用燃油の価格動向を注視しながら、著しい高騰や長期化など緊急的な事態に応じて水産業金融資金を活用し、利子補給などの特別融資対策を実施したい。
漁業を取り巻く環境は、就労者の減少や生産量の低迷に加え、新たな自然環境の変化や社会経済の影響も受け、漁業をなりわいにするには非常に厳しい状況であると言わざるを得ないが、市として今後、所得向上に向けてどのように取り組んでいくのか。
津田
信太郎
農林水産局長
漁業者が取り組む朝市、夕市、カキ焼き小屋などの直販事業を継続して支援するほか、カキ養殖の新技術の導入による品質の向上と生産量の増大や、水産ベンチャー事業として新たな水産加工品の開発などを支援する。また、今年度は唐泊の恵比寿カキが農林水産省及び日本貿易振興機構(JETRO)が推進する農林水産物輸出促進プロジェクトに選定されたことから、国内外への販路拡大やブランド化などの取り組みを支援したい。
漁業は、本市にとって大切な産業であり、漁業所得の低迷は後継者不足の要因になっていると思われるので、魅力を感じられる安定した産業として次世代へ引き継がれていくよう、しっかり支援するよう要望する。次に、生産者が置かれた環境が年々厳しくなる中、流通のかなめとなる福岡市中央卸売市場、鮮魚市場の取り組みについて尋ねる。まず、鮮魚市場を取り巻く環境は、国内漁業生産量の減少、インターネット環境の普及による産直販売、道の駅や直売所などにより、22年度の卸売市場経由率は56%と低下傾向である。また、高速道路などの交通網の発達、冷凍など鮮度維持技術の向上とともに、ICTの進歩等により全国の市場価格が瞬時にわかり、生産者はより有利な市場に出荷するようになってきた。水産物流通において、安全安心でかつ安定供給を行うために鮮魚市場の役割は非常に重要であると考えるが、24年度鮮魚市場の取り扱い数量と取り扱い金額並びに前年度との比較について尋ねる。
津田
信太郎
農林水産局長
鮮魚市場の取り扱い数量は、23年度9万941トン、24年度8万4,603トンで、前年比93.0%である。また、取り扱い金額は、23年度473億5,300万円、24年度443億1,900万円で、前年比93.6%である。
取り扱い数量が減少する中、消費者ニーズの多様化による魚介類消費の減少、価格の低迷などにより、市場関係者からは年々経営が厳しくなっていると聞くが、鮮魚市場の課題、対策等について尋ねる。
津田
信太郎
農林水産局長
鮮魚市場においては、取り扱い量をふやすための集荷力の向上や、市場外流通への対応、水産物の消費量をふやすための魚食の振興、効率的な市場運営のための施設整備など、さまざまな課題があり、これらの課題に対応するため、平成24年5月に福岡市と市場関係業界が一体となって市場全体を経営戦略的な視点から、市場のあり方や将来の方向性を検討する鮮魚市場経営展望策定委員会を設立し、協議を行っている。25年度は、学識経験者を加え、客観的かつ専門的な視点を取り入れて協議を進めており、本年度末までには市場関係業界が共通の認識を持って取り組む将来の目標や方向性を導き出したい。
引き続き、多様な市場関係者が一丸となって、将来に向けた協議・連携を行い、具体的な行動につなげ、この厳しい状況を打開できるよう期待する。一方で、これまで鮮魚店などの小売店は、対面販売により旬の魚の情報やおいしい料理方法など、魚のよさを消費者に伝える重要な役割を果たしてきており、小売店の減少はさらに魚離れを加速させることにつながっている。消費者に対して、魚屋の魅力を伝え、料理教室などによる魚食の振興が必要だと考えるが、24年度の取り組み状況について尋ねる。
津田
信太郎
農林水産局長
玄海うまかもん食育事業として、中学校などにおいて、地元の新鮮な魚介類を使用した料理教室を行っている。また、福岡市漁業協同組合と連携して漁協ホームページでの直販事業や、朝市、夕市などのイベントのPRを行うとともに、市民を対象とした体験漁業の中で漁師料理の試食を実施している。鮮魚市場においては、本市と市場関係者で組織する福岡魚食普及推進協議会の事業として、毎月第2土曜日に市場の一部を開放する市民感謝デーの開催、小中学生とその保護者を対象とするこどもおさかな料理教室、20代から30代の若者を対象とする長浜鮮魚市場’Sクッキングのほか、魚食普及を目的とした料理教室の費用を一部助成する料理教室サポート事業などを行っている。さらに、平成24年6月には長浜鮮魚市場ホームページを開設し、フェイスブックやツイッターも活用して、市民感謝デーのPRのほか、料理教室、魚のレシピや健康効能など、魚に関する情報提供を積極的に行うとともに、小売店などを対象に市場直送店の登録制度を設け、のぼり、ステッカー、認定証を配付し、市場直送店マップをホームページに掲載してPRを行う長浜鮮魚市場直送店PR事業を開始するなど新たな取り組みも行い、魚食の振興に努めている。
魚食振興の観点から、消費者と一番近いところで接する小売店への支援は非常に大切であり、力強い小売店の育成に今後もしっかりと取り組まれるよう強く要望する。水産業の入り口である生産者、流通、小売、そして出口の消費まで、一貫して質問したが、福岡の水産業を取り巻く環境は、生産者から消費者までの全ての過程において多くの問題を抱えており、しっかりとした全体的な底上げが今こそ必要だと思う。それぞれの業界、団体のさらなる自助努力、また、連携も無論必要であるが、市がイニシアチブをとり、よりよい方向に導くことも重要であると考える。水産業の振興については、漁業者の所得が勤労世帯に匹敵し、後継者不足が解決することを目指し、積極的に取り組まれたい。地元の水産物のブランド化、6次産業化などの動きが始まっているが、これらの取り組みを軌道に乗せ、全市的に広げていくことが一つのかぎとなると考える。また、水産物は日本人の食生活に重要な食料として、健康と長寿を支える要素の一つであり、水産物の消費減少は日本人の健康や文化にも影響を与える重要な問題である。魚食普及や食育活動、地産地消の促進、消費者ニーズに対応した生産・流通体制づくりなど、さらに取り組みを継続・強化し、市民を初め国内外の観光客にも、魚のおいしいまち福岡をしっかりアピールしていくよう強く要望する。
津田
信太郎
本市は、本年5月に人口150万人を突破し、全国6番目の人口を擁する政令指定都市だが、市域を見渡せば、豊かな自然が存在し、目の前には博多湾、その先には海の幸の宝庫である玄界灘が広がっている。これらの海から四季折々の新鮮な魚介類を生産し、市民の健康で豊かな食生活の一翼を担っているのが福岡市の漁業である。この漁業の現状は、水産資源の減少や魚の生産者価格の低迷、後継者不足や高齢化、消費者の魚離れなど、本当に厳しさを増している。市としては、漁業振興にさまざまな施策を講じていると思うが、本市の漁業は150万人の市民の食はもとより、魚がおいしいまち福岡としての都市のイメージを根幹で支えており、昨年は、第1回かき日本一決定戦において唐泊の恵比寿ガキが日本第2位の栄光をかち取るなど、夢のある新たな取り組みも芽生えてきている。さらなる地元水産物のブランド化、販路拡大に取り組み、稼げる漁業として将来に引き継ぐ魅力ある産業となるべきだと強く思っている。そこでまず、漁業者の所得向上など、持続可能な漁業に向けた取り組みについて尋ねる。本市の勤労世帯の可処分所得は、平成23年平均でおよそ500万円であるが、本市の沿岸漁業者の漁労所得を関係資料で見ると、200万円にも満たず低迷し、漁業をなりわいとするには大変厳しい状況がうかがえる。本市の沿岸漁業者数の最近の5年間の推移及び新規漁業就業者の状況について尋ねる。