2022年12月15日
津田
信太郎
農林水産局長
福岡市の農業従事者数の推移につきましては、直近の国の統計調査によりますと、平成22年4,563人に対して、令和2年2,580人となっており、この10年間で約43%減少しております。また、農地面積につきましては、福岡市農林水産統計書に基づきお答えしますと、平成23年2,832ヘクタールに対して、令和3年2,398ヘクタールとなっており、約15%減少しております。
この10年間で農業従事者が約43%、農地面積が約15%と大幅に減っており、福岡市の農業の衰退が懸念されます。そのような中、実際に農業を行っている農家の状況についてもお尋ねしたいと思います。
そこで、市内農家、経営主の平均年齢及び専業農家の平均農業所得についても、直近とその10年前を比較してお示しください。
津田
信太郎
農林水産局長
市内農家、経営主の平均年齢の推移につきましては、JA福岡市が実施した調査結果によりますと、平成23年度69.8歳に対して、令和3年度72.9歳となっており、3.1歳高くなっております。また、専業農家1戸当たりの平均農業所得につきましては、10年前のデータがないため、平成26年の調査結果と比較しますと、平成26年294万5,000円に対して、令和2年337万6,000円となっており、43万1,000円増えております。
平均農業所得は上昇しているものの、平均年齢が約73歳と高齢の方が多く、高齢化も加速しており、農家の現状は皆さんが思っている以上に厳しい状況にあると感じます。
こういった状況の中で、本市農業の抱える課題についてどのように認識されているのか、お尋ねいたします。
津田
信太郎
農林水産局長
福岡市の農業が抱える課題につきましては、農地の規模や場所、農作物の種類など、個々の農家により様々でございますが、共通する主な課題として、担い手の確保と育成や、生産性の向上が挙げられるものと認識しております。
それでは、答弁にありました課題について個別に聞いていきたいと思います。
まず、担い手の確保と育成の課題に対し、どのような取組を行っているのか、お尋ねいたします。
津田
信太郎
農林水産局長
担い手の確保と育成につきましては、新規就農者を増やすため、農業用の機械取得や施設整備に係る経費を助成する新規就農スタートアップ支援事業や、知識や技術を習得するための農業研修、アグリチャレンジなどを実施しております。その結果、平成24年度から28年度まで5か年の平均新規就農者数11.6人であったのに対し、平成29年度から令和3年度までの5か年では21.2人と大きく増加しております。また、地域の力強い担い手を育成するため、令和4年度より、未来へつなげる農村の担い手支援事業を新たに実施し、作業受託などに取り組む地域の中心的担い手に対し、営農継続に資する機械の購入を支援しております。支援を受けた農家からは、この事業のおかげで作業受託を続けることができ、さらに広げていく意欲が出たとの声もいただいております。
未来へつなげる農村の担い手支援事業は、農家の意欲を引き出すとてもよい事業であり、地域の力強い担い手を育成するためにも引き続き実施をしていただきたいと思います。
また、新たに農業に参入する新規就農者だけではなく、農家子弟による継承も大切であり、そのためには農業に明るい展望が持てるようにすべきであり、農業収入を確保するためにも生産性の向上は不可欠と考えます。
そこで次に、生産性の向上の課題に対してどのような取組を行っているのか、お伺いいたします。
津田
信太郎
農林水産局長
生産性の向上につきましては、令和元年度よりスマート農業の推進に取り組んでおります。このうち、西区のイチゴ農家では、農業用ハウスに環境制御システムを設置し実証実験を行ったところ、労働時間の削減や収量の増につながることが確認され、導入が進んでおります。また、肥料散布等でのドローン活用などの実証実験にも取り組んでおり、これからも新たな技術へのチャレンジを進めてまいります。このほか、栽培作業の省力化、効率化を図るための園芸施設整備への支援や、農家の生産工程を改善し効率化を図るためのGAP認証取得支援事業などを実施しているところであり、引き続き生産性の向上に向けてしっかりと取り組んでまいります。
スマート農業などの推進により生産性を向上させることは安定的な農業経営にもつながることから、引き続き取り組んでいただきたいと思います。
最近、IターンやUターンなどで農業を希望する若者も増えておりますが、農業を始めるには、土地の確保や農業用の機械、機材の購入費用などがかかり、継続するにも肥料、機械のメンテナンスなどのコストが継続的に必要となります。そういった障壁のある中で、親が農業を行っている方が引き継がれるのであればコストの軽減が図られることから、特に農家子弟による継承が非常に大切であると思います。
そこで、農家子弟への支援施策についてお尋ねをいたします。
津田
信太郎
農林水産局長
農家子弟への支援につきましては、多くの国、県、市の支援事業において、農家子弟も新規参入者を対象とする支援施策を活用することが可能となっております。特に令和3年度から開始した国の経営継承・発展等支援事業では、地域の中心経営体である親などから経営を継承し、発展させる取組を支援するものであり、農家子弟にとって利用しやすい制度となっております。こうした制度も活用しながら、農家子弟にも積極的に農業を継承し、地域の担い手として活躍していただけるよう支援してまいります。
答弁いただいたとおり、このような支援制度を利用して積極的に農業を継承し、農業の担い手として活躍をしていただきたいと思います。
そのような中、高齢化が進み、自身で耕作できなくなったときに農地の引受手が見つからなければ、耕作放棄地となるケースも増えているのではないかと考えます。耕作放棄地は、以前耕作をしていた土地で過去1年間以上作付をせず、今後数年間、再び作付をする予定がない農地のことでありますが、福岡市の耕作放棄地の現状とその対策についてお尋ねをいたします。
津田
信太郎
農林水産局長
本市の耕作放棄地の現状につきましては、令和3年の耕作放棄地面積は328ヘクタール、市内農地面積の13.7%を占めております。その対策としましては、耕作放棄地となっている農地を借り受け、活用する農業者等に対し、再生に係る費用、経費の一部助成を行う耕作放棄地再生事業を実施しております。本制度を活用した事例では、早良区内野において新規就農者が耕作放棄地を再生し、その後、多品目の露地野菜栽培に取り組まれ、さらに農地を広げていかれたケースもございます。このほか、農業委員会においてホームページに耕作放棄地を含む農地情報を掲載し、利用希望者とのマッチングを進めております。
農地が荒廃すると、病害虫や鳥獣被害の発生や原野化、森林化が進むことでごみの不法投棄等にもつながり、周辺の農家や地域住民にも影響を及ぼします。また、耕作放棄地の再生には多くの費用が必要となることから、新規就農者とのマッチングや農福連携、手間がかからない作物への転換等にしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
一方、最近では喫緊の課題もあると認識しております。新型コロナウイルスや年々多発する自然災害に加え、最近の国際情勢の悪化による燃油、肥料、飼料などの資材価格の高騰が農家の経営を大きく圧迫していると聞いております。
このような厳しい状況の中で、福岡市が行っている資材価格高騰への対応についてお伺いいたします。
津田
信太郎
農林水産局長
資材の価格高騰により、市内農家の経営が圧迫されていることについては、多くの農家の皆様、関係者の皆様から伺っております。このような状況を踏まえ、国や県が行う支援に合わせ、今年6月議会では燃油高騰対策としてヒートポンプの導入経費の一部助成に、また、9月議会では飼料高騰対策として畜産農家への飼料代の一部助成に係る追加補正を行うなど、緊急的な支援を実施してきたところでございます。今後とも、農家への影響や価格高騰の状況を注視しながら、安定的に営農を継続していただけるよう支援してまいりたいと考えております。
生産者を取り巻く環境は、中長期的にも、また短期的にも厳しい状況が続いています。私の知り合いの農家の話では、経費負担が大きくなり、このままでは農業を続けることができず、農地を広げるか、農業をやめるかと悩まされている方がいます。現実的には1人で耕せる農地面積には限界があり、農業をやめざるを得ないようであります。この状況がいつ終息するか分からない現状を踏まえ、生産者の声を真摯に受け止め、持続可能な農業の実現に向けて、農業生産資材の価格高騰対策などはしっかり取り組んでいただきたいと思います。
次に、流通についてお尋ねをいたします。
福岡市が開設者として管理する青果市場、ベジフルスタジアムは、市内3か所にあった旧青果市場、西部市場、東部市場が統合移転され、2016年に九州最大、西日本でも有数な青果市場としてアイランドシティに開場いたしました。取扱数量は、ここ数年おおむね31万トンと一定の取扱数量を確保し、市民の食を支える重要な役割を担うとともに、生産者と消費者をつなぐ上での重要な機能を担っています。
そこで、特に移転により飛躍的に向上した食の安心、安全を支える機能や消費者への情報発信機能について、青果市場ではどのような取組を行っているのか、お伺いいたします。
津田
信太郎
農林水産局長
青果市場における食の安全、安心を支える取組につきましては、定温卸売場の充実など、コールドチェーンの確立による鮮度の保持や出荷前の残留農薬検査などに取り組んでおります。また、消費者への情報発信につきましては、市場関係者が主体となり、消費者に直接、旬の青果物の販売やレシピの紹介などを行うベジフル感謝祭を定期的に開催するほか、社会科見学などを積極的に受け入れ、子どもたちを含めた幅広い世代の方々に生産者やベジフルスタジアムへの理解を深め、親しんでいただいているところでございます。
市民が飲食店や小売店で様々な青果物を食べ、あるいは購入できるのは、集荷に力を入れている青果市場が近くにあるからであります。青果市場は移転して卸売場面積の8割以上を定温卸売場として整備するなど、品質の管理を徹底するとともに、残留農薬検査の実施や市場関係者の長年の経験、知識の蓄積による目利きなどにより、新鮮で安全、安心な青果物を市民の食卓に届けています。今後とも、市民の食卓を支えるとともに、九州の青果物流拠点として役割を果たすため、広域的な集荷対策をしっかり行っていく必要があると考えます。
そこで、青果市場における集荷対策においてどのような取組を行っているのか、お伺いいたします。
津田
信太郎
農林水産局長
集荷対策につきましては、近隣市町村からの集荷に加え、全国の産地から特色ある品目を幅広く集荷するとともに、旬の時期に合わせ産地を切り替えて集荷する、いわゆる産地リレーなどにより、年間を通して多種多様な青果物を安定して供給できるよう、広域的な集荷を積極的に行っております。引き続き、卸売業者と連携して集荷対策に取り組み、九州の青果物流拠点として市民の食をしっかりと支えてまいります。
青果市場は周辺地域の農業の安定化にも寄与している重要な施設であり、引き続き安定的な運営をお願いしたいと思います。なお、青果市場においては、統合移転により施設機能が向上しておりますが、食肉市場においても、施設の更新や機能向上に向けて、隣接する市有地の活用なども含めた検討をお願いしたいと思います。
次に、消費についてお伺いいたします。
福岡市では人口160万人を超える大消費地を抱える強みを生かした都市型農業を推進しており、地産地消や消費拡大に取り組んでいます。その中でも、特に市内産野菜などの学校給食への利用は、消費の拡大に直結する大切な取組だと考えます。
そこで、市内産農産物の学校給食への利用の取組についてお伺いいたします。
津田
信太郎
農林水産局長
市内産農産物の学校給食への利用につきましては、JAや教育委員会、学校給食公社と連携し、出荷状況や学校給食の献立、食材購入状況等に関する情報交換を定期的に行うことで、小学校給食におけるキャベツやタマネギなどの主要18品目の市内産農産物の利用割合が令和2年度で24.5%となっております。今後とも、学校給食における市内産農産物のさらなる活用について、関係者と連携して取り組んでまいります。
子どもたちが、その日に食べた給食の野菜が新鮮でおいしかったといった話を家庭ですることにより、家庭でも市内産の野菜を買ってみようということになり、地産地消の意識の醸成にもつながると思います。これは私が知り合いから聞いた話ですが、市民農園において直接土に触れ、農産物を育てた経験から、生産者の苦労を知って、価格だけを比べて購入しなくなったということも、また農業体験も地産地消につながる重要な取組であると考えます。また、市政意識調査によると、消費者が農産物を購入する際の特に重要な点は、味、鮮度、価格と並んで、産地という回答も多くなっております。例えば、全国的に広く認知されている博多あまおうやブランド力の向上が進む博多和牛などもありますが、市内産農産物についてもブランド化を進め、広く購入までつなげていくことが大変重要であると考えます。
そこでお尋ねいたしますが、ブランドとして価値を高めることができる市内産農産物に何があるのか、お伺いいたします。
津田
信太郎
農林水産局長
市内の特徴的な農産物としましては、1980年代からJA福岡市が全国に先駆けて取り組んだ無農薬、減化学肥料などによる赤とんぼ米を生産しているほか、茎まで軟らかく、苦みが少ない、生でも食べられる博多春菊、県内最大の産地である北崎、元岡のバラなど、様々なものがございます。他の農産物との違いや、栽培している生産者や団体などのストーリーなど、その農産物の価値を見いだし、広く認知度を上げていくことが重要だと考えており、今後も市内産農産物のブランド化に向け、しっかりと取り組んでまいります。
消費者が市内農産物の価値に気づき、適正な価格で購入をしていただく、こういった消費者の意識を変えていくことが必要であり、今後も行政として市内産農産物のブランド化に向けてしっかりとPRをしていただきたいと思います。
これまで、川上から川下まで、生産者、流通、消費の各側面からお聞きをしましたが、福岡市において食料の安定供給にもつながる持続可能な農業を実現していくためには、所得の向上を図るなど、農業を職業としても魅力的なものにする必要があります。そのことが担い手の確保、育成などの課題の解決にもつながるものと考えております。福岡市の農業が持続可能となるよう、農業関連団体、いわゆる生産者、農協、市場関係者などと協議をさらに重ね、農業関連予算を確保し、必要な農業施策をしっかりと行っていくことを求めます。
最後になりますが、これまでの答弁を踏まえ、持続可能な農業の実現に向け、今後の施策についてどのように取り組んでいくのかお尋ねして、この質問を終わります。
津田
信太郎
農林水産局長
福岡市の農業が持続的に発展していくためには、新規就農者の支援やスマート農業の推進、安定的かつ安全、安心な流通機能の確保、市内産農産物のブランド化の促進など、生産から流通、消費に至るまで、総合的に取り組んでいく必要があると考えております。今後とも、地域の特性や関係者の声を踏まえながら様々なチャレンジを応援し、食べ物がおいしいまちを支え、農とともにある豊かな暮らしの実現を目指してまいります。
福岡市ではコロナ禍の影響で激減している観光客も少しずつ回復していますが、福岡市に来られる方は、福岡の食文化を楽しみにされていることは皆さんも御存じのことかと思います。市政意識調査において、新鮮でおいしい食べ物の豊富さの満足度が90%を超えていることからも、新鮮な農水産物が手頃な価格で購入できることが福岡市の魅力の一つとなっております。その魅力である食文化を支え、大きな役割を果たしている福岡市農業や農地については、安全で安心な農産物の提供だけではなく、自然環境保全や洪水防止などの機能、安らぎや癒やしを与える場の提供など、市民生活を支える重要な役割を担っており、福岡市の次世代を担う子どもたちに残していく必要があると考えます。
福岡市では、新たに福岡市農林業総合計画を策定し、30年後の農業が目指す姿として、食べ物がおいしいまちを支え、農とともにある豊かな暮らしをつくるという長期ビジョンを掲げました。私は以前の議会で水産業総合計画について、生産から流通、消費まで一貫して質問を行いましたが、30年後の農業の目指す姿を実現させるためには、川上である生産から流通、そして川下となる消費まで、どの部分も抜けることがない施策が必要であると考えており、今回は福岡市の農業施策について、生産、流通、消費の各側面からお尋ねをしたいと思います。
まず、川上である生産について、生産現場の現状をお伺いします。
福岡市の農業は、都心部と自然豊かな地域が隣接した特性を生かした都市型農業が展開され、花卉、軟弱野菜などの栽培が盛んとなっていますが、その農業を支える福岡市の農業従事者数及び農地面積の推移について、直近とその10年前を比較してお示しください。