2016年03月23日
津田
信太郎
環境局長
電力小売全面自由化の効果は、まず、市民などの消費者にとって期待されることとしては、多様な電力会社や料金メニューによって選択肢が拡大すること、電力会社間の競争によって電気料金が抑制されることなどがある。また、産業面の効果としては、新規参入など、企業の事業機会が拡大されることなどがある。次に、全面自由化と言われる理由については、これまで工場やビルなど大口の電力を使用する施設は既に自由化されており、今回の自由化によって家庭などの小口の施設を含む全ての施設が自由化の対象となるためである。
電力小売の自由化は、工場やビルなど、電力を多く使ういわゆる高圧と言われる施設では既に実施されており、本市においても、市役所本庁舎など電力を多く使う高圧施設が多数あるが、これまでの電力小売の自由化の流れと、それに対する本市の対応について尋ねる。
津田
信太郎
環境局長
高圧施設を対象とした自由化は契約電力の規模に応じて段階的に実施されており、平成12年3月から大規模工場など契約電力が2,000キロワット以上の施設、平成16年4月から中規模工場など契約電力が500キロワット以上の施設、平成17年4月からスーパーなど契約電力が50キロワット以上の施設へと対象が拡大されている。本市の対応としては、各段階の自由化にあわせて対象となる市有施設で競争入札や競争見積もり合わせを導入し、より安価な契約先を選定している。
今回の自由化は家庭や商店など50キロワット未満のいわゆる低圧と言われる施設を対象とするものであるが、これはすなわち市民が日常使う電力について市場を開放するものであり、8兆円と言われている経済効果は市民の生活や地域経済に大きな影響を与えるものである。今回の自由化に伴い、新たに電力小売への参入を希望する企業は小売電気事業者として国の登録を受ける制度が設けられたが、小売電気事業者の参入や動向について、現在どのような状況になっているのか。
津田
信太郎
環境局長
小売電気事業者の参入状況については、平成27年8月から登録の申請が開始され、平成28年3月18日現在、全国で253社が登録されており、申請中のものと合わせると500を超える企業が参入する見込みとなっている。次に、小売電気事業者の動向としては、大手電力会社では、九州電力グループや中国電力などが東京電力管内に進出するなど、これまでの区域を越えた競争が始まっている。また、ガス会社や携帯電話など多彩な業種の事業者が参入してきており、さらに、サービスについても、新しい料金メニューやポイント制、電力以外のサービスとのセット販売などが出てきている。
まさに自由化に伴って経済環境も大きく変化しようとしており、最近は、テレビや新聞などでも新たな企業の参入や新しい電気料金のメニュー、新しい電力サービスについてのニュースや宣伝を目にする機会がふえている。市有施設にも小規模な施設が多数あり、いろいろな企業の参入状況などを踏まえると、市有施設においてもこれまで以上に電力の自由化のメリットを最大限得るための取り組みが必要であるが、今回の自由化によって市有施設で新たに自由化の対象となる低圧施設はどのくらいあるのか。
津田
信太郎
環境局長
市有施設における低圧施設は、公民館や消防出張所など約900施設あり、このほかにも、低圧の契約を行っている設備などとして道路や公園の照明などがある。
これだけ多くの市有施設があるため、単純に契約先をこれまでの九州電力から競争入札などに切りかえるだけではなく、例えば、複数年契約を取り入れると、事業者にとっても長期の電力調達計画が立てやすくなり、結果として安い電力を確保できるなど、財政効果を生む可能性も考えられる。折しも、先日の新聞でも報道されたが、27年度、環境局では電力の小売の全面自由化に対応して、市有施設の効果的かつ効率的な電力調達について検討を行い、28年度の電力契約においては電力一括調達という契約手法を新たに始めるとのことである。27年度の検討状況、電力一括調達とはどのようなものか、28年度から実施する内容について尋ねる。
津田
信太郎
環境局長
27年度に行った検討内容は、市有施設の電力使用量や使い方などのデータを収集、分析し、新たな電力調達方法の調査を行ったものである。その結果、電力使用のパターンが類似する施設をまとめることや電力の使い方が異なる施設を組み合わせて平準化させることなどで電力の価格を下げる電力調達方法の実施案を考案したところである。次に、電力一括調達とは、複数の施設を組み合わせてグループ化し、グループ単位で電力供給の契約先を決める調達方式である。28年度契約からは電力使用のパターンに応じて、公民館関連163施設を8グループに、小中学校関連213施設を37グループにまとめ、試行的に電力一括調達を実施する。
28年度から試行的に公民館、小中学校を対象とした入札を行うとのことであるが、これによりどの程度の電気代の削減効果が得られるのか。
津田
信太郎
環境局長
28年度から試行的に実施する電力一括調達については、現在、契約先である小売電気事業者を募集しており、契約先が決まる平成28年4月下旬以降に電気代削減効果が判明する。今回の分析結果によれば、小売電気事業者の動向なども勘案すると1,000万円単位の電気代削減効果が得られると考えている。
電気代の削減は、市民の貴重な税金を他の施策などに有効に使えることにもつながるため、今回は小中学校、公民館のみを対象とした取り組みとのことであるが、この効果を検証しながら、さらに工夫を重ね、今後は積極的に他の施設などにも広げられたい。電力システム改革では、電力小売の全面自由化だけではなく、平成29年には電力会社の要請に応じて節電に協力すると報酬が支払われる仕組みであるネガワット取引市場の創設が予定され、また、使用した電力のデータがリアルタイムで得られるスマートメーターが全ての家庭や施設に設置されつつあるなど、電力を使う消費者の行動を変えていくような環境の変化も出てきている。このような電力のデータの活用や新しい市場の動向にあわせて情報関連技術を活用して電力の使い方を調整することにより、さらなる節電を初め、新たな経済価値を得ることも可能になると期待している。市有施設においても、今後、電力システム改革の動きに合わせた電力の使い方の検討が必要になると思うが、その対応はどのように考えているのか。
津田
信太郎
環境局長
市有施設の電力の使い方としては、ネガワット取引市場の活用や新たなエネルギー関連設備の導入などが必要であり、そのためには電力の使い方をリアルタイムに見える化し、空調などの設備を制御するエネルギーマネジメントシステムや、これに連動する太陽光発電や蓄電池などの導入が重要と考えている。そのため、28年度に市有施設へのエネルギーマネジメントシステム等の設備導入の費用対効果などについて調査を行うこととしている。
新たなシステムの導入などについて、効果が期待できるものはぜひ市有施設でも率先して導入し、その効果を広く民間に発信し、家庭や事業所への普及にもつなげられたい。実際に電力会社を選ぶこととなる市民や事業者は戸惑っていると思うが、自由化が迫る中、九州・福岡ではどのような事業者が参入しようとしているのか、また現在の状況に対してどのような課題があるのか。
津田
信太郎
環境局長
九州・福岡での小売電気事業者の参入状況については、九州電力を含めて32社が市内の一般家庭への電力の小売を予定しており、九州に本社を持つ小売電気事業者は27社で、そのうち市内に本社を持つものは9社となっている。次に、現在の課題としては、料金やサービスのメニューが多く、その内容が複雑であるなどの市民の当惑や、事業者の倒産によって停電しないかなどの不安に加えて、各社の料金メニューの中には電力の使い方によってはかえって現在よりも電気料金が高くなる場合があること、さらには悪徳業者や便乗商法などの消費者トラブルなどを懸念している。
市民生活に直接つながる制度改正においては消費者トラブルは大きな課題になるため、今回の電力自由化でもさまざまな条件が伴う電気料金プランがあることにより、契約に関するトラブルが懸念される。そこで、電力自由化について、積極的に市民の理解を深め、契約トラブルの未然防止などに努める必要があると思うが、所見を尋ねる。
津田
信太郎
環境局長
小売電気事業者の監督などは経済産業省の所管ではあるが、市民に一番身近な市役所として率先し、電力自由化に対する市民理解の促進とともに、特に消費者トラブルが懸念されることから、消費生活センターと連携した広報、啓発を行い、契約トラブルの未然防止に取り組んでいく。また、街頭キャンペーンや出張セミナーなどさまざまな機会をつくり市民に伝えるとともに、チラシや市政だより、市ホームページなど広報ツールを最大限活用する。さらに国や商工会議所、市内の小売電気事業者、報道機関などとも連携し、全面自由化の初年度である28年度は特に力を入れて周知、広報を行っていく。
市民にきちんと届く周知をお願いしたい。電力の小売事業については、地場企業も新たに参入している状況であるため、九州電力を含め地場企業に頑張ってもらい、市民が地場企業の電力を選ぶ環境をつくっていくことが地域経済にとって好ましい状況だと考える。そのため、参入している地場企業の情報を市民に周知することや、多くの地場企業が電力小売を初め自由化された市場に関連する産業に参入できるようなサポートを行うなど、エネルギーの地産地消や地域経済の活性化の観点が必要と考えるが、所見を尋ねる。
津田
信太郎
環境局長
市民が安心して電力を使うためにも、適正な競争環境の中で地場の小売電気事業者が参入していくことが重要であると考えている。電力自由化に当たっては、地場の小売電気事業者などと連携し、自由化の周知広報や事業者の動向などの情報提供を行っていく。また、新たなエネルギービジネスに関心のある企業向けのセミナーやビジネスマッチングを実施するなど、地域経済の活性化に資するための事業も実施していく。今後とも、電力自由化に対する市民理解の促進を積極的に図るとともに、エネルギーの地産地消や地域経済の活性化の観点を踏まえ、市民や事業者が安心して電力を選べる環境づくりに取り組んでいく。
電力は生活になくてはならない大切なインフラであり、電力を利用するさまざまな機器、設備の普及にあわせて、九州電力などの一般電気事業者は発電設備を確保し、送電線の設備などさまざまな対策を行ってきた結果、電気が届くのは当たり前で、電力消費を意識することもなく、使った分だけ電気料金を払ってきた。市民がみずから選択して電力を使う環境へと移行する今回の電力自由化は、市民が立ち返ってエネルギーのことを考えるよい機会ともなり、節電などの市民意識の向上にも効果があるのではないかと考える。来年には都市ガスの小売自由化が予定されており、このことも市民生活とエネルギー関連業界に与える影響は大変大きく、大きな変化を来すものと見られている。エネルギーを取り巻く環境が激変していく中で、市民や事業者が混乱することなく、みずから判断してエネルギーを利用できるような環境づくりに取り組まれたい。
津田
信太郎
いよいよ平成28年4月1日から電力の小売が全面自由化され、電力小売の全面自由化によって、これまで一般電気事業者と言われる全国大手電力会社10社によって行われてきた電力販売が全面的に開放、自由化され、さまざまな企業、事業者が電力を販売できるとともに、消費者がみずからの判断で自由に電力会社を選べるようになる。電力システム改革は、これまでの電力供給のあり方を根本的に変える大きな改革と言われているが、電気を空気のように特に意識もせずに当たり前に使ってきた中で、この改革によって生活の何が変わるのか、そして4月から電力小売が全面自由化されるといっても、具体的にはどのようなことができるようになるのか、市民がすぐに理解することは難しいのではないか。そこで、まず初めに、電力小売の全面自由化によってどのような効果が期待されるのか、また、単なる自由化だけではなく、全面自由化と言われている理由について尋ねる。