2023年9月21日
津田
信太郎
経済観光文化局長
美術館については、令和2年度が15万1,000人余、3年度が35万3,000人余、4年度が38万5,000人余であります。
次に、アジア美術館については、2年度が7万6,000人余、3年度が12万6,000人余、4年度が35万6,000人余です。
最後に、博物館については、2年度が12万9,000人余、3年度が16万8,000人余、4年度が23万9,000人余であります。
博物館、美術館等に求められる役割が多様化し高度化していることへの対応を目的として、令和4年4月に70年ぶりに博物館法が改正され、博物館等の事業に資料のデジタルアーカイブ化が追加されるとともに、新たな役割として文化観光推進に取り組むことが努力義務となりました。今回、博物館法の改正によって、美術館、博物館はどのような役割を求められるようになったのかお尋ねします。
津田
信太郎
経済観光文化局
美術館、博物館は、これまで社会教育法に基づいて社会教育施設と位置づけられてきたが、博物館法の改正により、今回、文化芸術基本法の精神に基づくものと定められたことで、同法が含む観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業などの関連機関と連携した文化施設としての役割も求められるようになっています。
博物館法改正の趣旨にのっとり、今後、美術館、アジア美術館、博物館の3館が本市の文化施設、特に文化観光拠点施設としての役割や機能をどのように果たしていくのか、また、市民をはじめとする多くの国内外からの来館者をどのように楽しませてくれるのか、大変期待をしております。3館においては、法改正を機に、収集や保管、展示や教育、調査や研究の本来の基本的機能に加え、文化観光推進などの新たな役割や所蔵資料のデジタルアーカイブ化、外国人への対応策について新たに規定し、ビジョンや目標、アクションを明確にして計画的に取り組むべきだと考えます。
そこで、博物館法改正に当たって新たに追加された博物館資料のデジタルアーカイブ化について、3館の取組状況をお尋ねします。
津田
信太郎
経済観光文化局長
デジタルアーカイブについては、美術館、アジア美術館及び博物館の3館とも、所蔵品をデータベース化した上でホームページにおいて公開し、随時情報を更新しており、利用者からの意見を反映しながら改善を進めています。
公立の美術館、博物館の果たす役割はとても大きいということです。私は、これまで海外や各地の美術館、博物館等にて、すばらしい収蔵作品と企画展示を見てきました。そうした各地の施設を見るたびに、本市の博物館、美術館と対比させて想像します。本市の3館は国内でも有数の収蔵作品を誇り、世界からも注目されるような大変価値の高い作品を多数所蔵しています。これは、私たち市民は誇るべきであり、私たちの貴重な財産でもあります。まず、市民全員がその事実をしっかりと認知し、実際に各館に足を運ぶことが重要だと思っています。
では次に、3館の中でも特にアジア美術館にフォーカスして質問をしていきたと思います。先日、客足が好調であると聞いたため、世界水泳を記念してアジア美術館で開催された水のアジア展を鑑賞してまいりました。子どもにも大変人気があったということでしたが、一見するとカラフルで楽しげに見えるが、実は海洋汚染について問題提起している作品をはじめ、ボートピープルが命を落とした海を美しい映像で表現している作品など、どの作品も大変示唆に富んでいました。展示作品を見ながらそれを楽しみ、考えさせることが多々あって非常によかったと思います。そこで、先日まで開催されていた水のアジア展について、企画の趣旨と概要についてお尋ねします。
津田
信太郎
経済観光文化局長
水のアジア展は、世界水泳選手権2023福岡大会を記念した特別展で、アジア各国で活躍する8人の現代美術家が表現した、水をめぐる多彩な作品を体感できる展覧会です。
では、水のアジア展の観覧者数と、同展がどのように評価されたのかお尋ねします。
津田
信太郎
経済観光文化局長
水のアジア展は、令和5年7月1日~9月3日の62日間開催し、3万3,129人の観覧者数がありました。これは、アジア美術館が主催した展覧会では歴代2位の観覧者数で、同じ時期に開催された特別展「おいでよ!絵本ミュージアム」からの集客も狙い、展示の入り口に絵本展に来た子どもたちが関心を持ちそうな作品を展示するなどの工夫をしたことが、集客につながったのではないかと考えています。また、8月28日に掲載された西日本新聞社の展覧会評では、水を通して社会に向き合う美術家の真摯な取組などが評価されています。
アジア美術館が企画した特別展の中で歴代2位の集客であったということは、大いに努力したのだと思います。
周知のとおり、本市は2000年を超えるアジアとの交流の歴史の中で、多様な文化を受け入れてきました。アジア美術館は、そのような歴史や風土を踏まえて、アジアの近現代美術を専門に収集、展示する美術館として平成11年に世界に先駆けて開館しました。開館以来、アジアのアーティストを福岡に招聘し、アジア各国とのネットワークを築いています。このように同館は、アジア近現代美術の魅力を発信し続ける世界でもオンリーワンの美術館として活動し続け、来年3月には開館25周年を迎えます。古来、海の向こうの国々との交流拠点都市として成長してきた本市にとって、アジアとのつながりはまさに都市のアイデンティティーを体現するもので、他都市にはない強みであるとともに、その中でもアジア美術館は本市のアイデンティティーを象徴する大変重要な文化施設であるとも考えます。アジア美術館が世界に誇るコンテンツを磨き上げ、より多くの観光客がアジア美術館を目的として福岡を訪れ楽しめるように、文化観光施設としてしっかり活用すべきだという視点から質問してまいります。まず、アジア美術館の設立趣旨について改めてお尋ねします。
津田
信太郎
経済観光文化局長
アジア美術館は、平成11年に世界に先駆け、アジアの近現代美術を専門とする美術館として福岡市美術館から独立し、アジア近現代美術の収集や展示、国内外の人的、組織的ネットワークの構築、市民の異文化との出会いと理解の機会の提供を行うことを目的に設立したものであります。
アジア美術館以外に、こうしたアジアの近現代美術を専門に扱っている美術館は、国内にあるのでしょうか。
津田
信太郎
経済観光文化局長
アジアの近現代美術を専門的に扱っているのは、国内だけではなく、世界でも福岡アジア美術館のみであります。
アジア美術館では、所蔵品の展示のほかにも水のアジア展やバンクシー展など、様々な展覧会が開催されているかと思うが、展覧会の種類やその違いについてお尋ねします。
津田
信太郎
経済観光文化局長
アジア美術館では、アジア美術館のコレクションを展示する常設展、水のアジア展のように、アジア美術館のコレクションのほかに、ほかの美術館などから作品を借りて主催する特別展、市民の利用や新聞社などが開催するバンクシー展やゴールデンカムイ展などの貸館があります。
アジア美術館の所蔵品を紹介する展覧会が常設展ということであるが、常設展で展示されるアジア美術館のコレクションの概要をお尋ねします。
津田
信太郎
経済観光文化局長
アジア美術館のコレクションについては、19世紀頃から現代までを中心に、パキスタン以東、モンゴル以南、インドネシアの以北以西の23か国と地域の近現代美術作品を体系的に収集しており、所蔵点数は約5,000点であります。
それでは、通常の常設展ではどのくらいのコレクションが展示されているのかお尋ねします。
津田
信太郎
経済観光文化局長
アジア美術館で開催する常設展では、おおむね70点のコレクションを展示しています。
所蔵点数が約5,000点ある中で常設展が70点しかない。せっかくの貴重なコレクションがそれだけしか展示されていないのは本当にもったいないと思います。そもそも、展示スペースが足りていないのではないでしょうか。
次に、アジア美術館の所蔵品を展示した常設展について、令和4年度の観覧者数を教えてください。
津田
信太郎
経済観光文化局長
令和4年度の常設展は、アジアの近現代美術を前期と後期で展示替えをして開催しており、観覧者数は前期に2万2,081人、後期に3万4,399人、合計で5万6,480人であります。
1年間で5万6,000人ほどということです。とはいえ、アジア美術館の観覧者数だけでは、なかなか客観的な評価がしづらいところです。そこで、数ある地方の美術館の中でも全国的に有名で、観覧者数が多い金沢21世紀美術館と比較してみたいと思います。まず、金沢21世紀美術館の設立趣旨についてお尋ねします。
津田
信太郎
経済観光文化局長
金沢21世紀美術館は、まちに開かれた公園のような美術館をコンセプトに、新しい文化の創造と新たなまちのにぎわいの創出を目的として、平成16年に設立されました。
同館のコレクションの概要をお尋ねします。
津田
信太郎
経済観光文化局長
金沢21世紀美術館では、1980年以降に制作された新しい価値観を提案する世界の現代アートや、建築と一体となって設置された作品が収集されており、その代表作品として、屋外に設置されているスイミングプールがあります。
令和4年度における同館の常設展の観覧者数を教えてください。
津田
信太郎
経済観光文化局長
金沢21世紀美術館の令和4年度の常設展の観覧者数は、23万1,275人であります。
金沢21世紀美術館は、令和4年度には23万人が常設展を観覧されたということです。コレクションを展示する常設展の観覧者数で比較すると、アジア美術館の5万6,000人に対して金沢21世紀美術館は23万人と、アジア美術館の約4倍の集客力があるということになります。では、アジア美術館と金沢21世紀美術館の集客力の差はどこにあると考えておられるのかお尋ねします。
津田
信太郎
経済観光文化局長
アジア美術館は地下鉄中洲川端駅に直結し利便性の高い場所にあるが、ビルの7階、8階に位置するため、観覧目的外では立ち寄りにくい環境となっている。また、アジアの近現代美術の意義や魅力、所蔵品の価値を市民や観光客に伝え切れていないこともあり、結果として集客につながっていないものと認識しています。一方で、金沢21世紀美術館は、金沢市内の中心部に、日本3大名園である兼六園に隣接して立地しており、建築物はグッドデザイン賞を受賞した特徴的なもので、誰でも入りやすいオープンな雰囲気になっている。これらのことから国内外の観光客が訪れやすい、また、訪れたい観光施設として認知されており、集客につながっているものと考えます。
確かに、アジア美術館も水のアジア展は頑張っていたと思います。金沢21世紀美術館とは収集範囲や取り巻く環境が違うので一概に比較はできないが、私は、アジア美術館は金沢21世紀美術館にも負けない、非常に高いポテンシャルを有していると考えます。これからそれを明らかにしていきたいと思います。現在開催中のアジア美術館ベストコレクション展について、企画の趣旨と展示内容についてお尋ねします。
津田
信太郎
経済観光文化局長
現在開催している福岡アジア美術館ベストコレクション展は、開館25周年を記念するもので、アジア美術館のコレクションの中で、オールスターというべきアーティストの作品が一堂に会した展覧会となっています。今回展示しているアーティストは、世界的に活躍し、母国のアートの評価を高め、アートマーケットからも注目されているトップアーティストであります。本展覧会を通して、アートファンのみならず、初めてアジア美術を見る市民や観光客にも、アジア美術館のコレクションのすばらしさを知ってもらいたいと考えています。
経済観光文化局長
当該作品は、中国のファン・リジュン氏のシリーズ2No.3という作品で、平成8年に約1,400万円で購入しております。
それでは、この作品の現在の評価額をお尋ねします。
津田
信太郎
経済観光文化局長
評価額については、ファン・リジュン氏が制作した同等品が平成26年に国際的なオークションで取引されており、その額を現在の為替レートに置き換えると、約11億円となります。
本当にびっくりします。私は実際にこの常設展も見に行きました。実際に最初に入ったところにこの作品があります。実際の絵を見て、これが11億円近くすると思うと、すごく見てよかったなと思いました。こうやって身近に価値がある作品を見られるというのはなかなかないし、これは本当に市民が恩恵を受けるべきであると思います。1,400万円で購入したものが11億円になったということは、資産価値が約80倍になったということであります。ほかにも、パネルに示すジャン・シャオガンという中国の画家の作品があり、これもベストコレクション展で見ることができます。この作品は、購入時は200万円だったそうですが、同等品の評価額が現在16億円であると聞いています。これがアジア美術館に行けばしっかりと見ることができます。価値としては約800倍になったということであります。アジア美術館の所蔵品について、評価額をもってそのすばらしさを挙げてみました。
同館は、昨今評価が高まってきている作家の初期の作品の収集や、アジア各国の近現代美術史がたどれるような収集を行ってきたことが国内外の美術関係者から高く評価され、アジア美術館の所蔵品を借りることなくしてアジアの近現代美術の展覧会は開催できないと言われるほどだと聞いています。しかし、アジア美術館がこうしたすばらしい作品を所蔵していることなど、市民や観光客はほとんど知らないのではないでしょうか。先ほど例に挙げた金沢21世紀美術館には、スイミングプールという代表作があります。とても印象的であり、プールの中に行って下から見られるような大きなもので、それ全体が作品ということであります。美術館を訪れる人はこれを必ず見て、写真を撮ってSNSに投稿します。自分が旅行することを考えると容易に想像がつくと思うが、仮にパリに旅行するときにどこを訪れるでしょうか。エッフェル塔や凱旋門、そしてやはりルーブル美術館ではないだろうか。なぜルーブル美術館なのか、そこにはモナ・リザがあるからです。多くの来観客が訪れる美術館には、あの美術館にあの作品を見に行こう、あれだけは見ておかなければというオンリーワンのコンテンツがあります。ファン・リジュン氏の作品など、今回ベストコレクション展で展示するような優れた作品は、期間限定ではなく常設展示でいつでも鑑賞できるようにし、作品を全面に出すことによりアジア美術館の魅力を打ち出し、博物館法にもうたう、市内有数の観光施設としていくべきだと考えます。そのためには、多くの貴重な所蔵品を紹介するとともに、目玉作品はいつでも見られるように工夫するほか、集客力の向上に努める必要があると思いますがいかがでしょうか。
津田
信太郎
経済観光文化局長
博物館法の改正により、観光等と連携する文化施設にもなったアジア美術館において、ファン・リジュン氏の作品などのアジア美術館の代表作品を常設展示し、アジアの近現代美術の魅力や所蔵品の価値を広く市民や観光客に紹介していくという視点は、より重要になってきているものと考えています。しかしながら、アジア美術館の顔とも言うべき作品と所蔵する多数の作品、特に昨今増加するインスタレーションと呼ばれる大型作品などを併せて展示するには、スペースが限られていることもあり、現在、展示替えなどの工夫を行いながら紹介しているところであります。今後、指摘を踏まえ、金沢21世紀美術館などの事例を参考にしながら、集客力の向上に向けた検討を進めていきます。
努力は行っているということであるが、そもそもアジア美術館は複合施設の中にあるので、現在の環境ではスペースの拡充は難しいと思います。実は今回、アジア美術館ベストコレクション展も水のアジア展もとても面白い展示であるのに、展示スペースの狭さによって若干の物足りなさを感じました。もう少し心行くまで見ることができると、没入感であったり、満足感も違った感想が出てきたのではないかと思います。もっとアジア美術のすばらしさを訴えるために、さらなる空間が必要ではないかと考えます。また、アジア美術館は、中洲川端駅直結で利便性が高く、その意味では展示環境には恵まれているかもしれません。しかし、先ほどの答弁にもあったように、金沢21世紀美術館のように金沢市の中心部にある独立した、しかも有名建築家が設計した建物で、県内最大の観光地である兼六園に隣接しているという条件と比較すれば、十分な環境とは言えないと思います。アジア美術館は、日本でオンリーワンの観光資源として磨き上げられるべき施設であり、福岡のアイデンティティーを示すまちの顔となるべき施設だと考えます。そのためには、より利便性や集客性に優れた場所での展示も検討していく必要があるのではないか。その検討を要望して質問を終わります。
津田
信太郎
自由民主党福岡市議団を代表して、「福岡アジア美術館の魅力向上について」質問してまいります。
暦では既に秋となっており、秋と言えば芸術の秋というように、この時期は文化やスポーツなどのイベントも多く、芸術と触れ合う機会も増えてきているかと思います。意外に思われるだろうが、私も実は芸術が好きです。わざわざ足を運び芸術を直接見て感じること、それはネットや書籍で見るよりその大きさであったり迫力、肌感など、鑑賞する私たちに作品自体が訴えてくるメッセージ性や主張だけではなく、癒やしや安らぎも与えてくれます。時には心に刺さる痛みさえ感じる作品もあります。作者は作品を通じて、鑑賞する私たちに時や場所を超えてメッセージを送り、長い月日や時代を超えてまで、私たちを悩ませたり考えさせてくれたりもします。芸術に触れ合うことは、私たちの心を豊かにし感受性を高めてくれます。
私たちが住む福岡市は、あらゆるところで様々な芸術に触れ合うことができる魅力ある豊かなまちであります。身近に多くの芸術があって触れ合えるという恩恵を、市民にしっかりと認識してほしいという思いで質問いたします。
本市には美術館、アジア美術館、博物館と3館あります。今回は、世界に先駆けてアジアの近現代美術を専門に収集し、アジアのアーティストとの交流を深めてきたことで、世界に評価されているアジア美術館を取り上げるとともに、70年ぶりに改正された博物館法についても尋ねたいと思います。平成29年に、本市の集客施設におけるインバウンド対策について質問を行いました。その中で、美術館、アジア美術館、博物館の3館におけるコンテンツのさらなる充実や魅力の磨き上げを行い、文化観光拠点として魅力向上を図るべきだと申し上げました。そこでまず、過去3年における美術館、アジア美術館、博物館それぞれの総観覧者数を尋ねします。